「油」から「水」へ――。印刷業界で緩やかなゲームチェンジが起こっている。従来、飲食料品のラベルやパッケージなどは「油性グラビア印刷」が主流だったが、技術の発達を受けて「水性フレキソ印刷」と呼ばれる新たな印刷方式の導入が広がっているのだ。

 フレキソ印刷は凸版印刷の一種で、弾性のある印刷版にインクを塗布して印刷する。表面が滑らかでない段ボールや厚紙などに適した印刷方法だ。ただ、金属製の筒を加工して製版する凹版印刷のグラビア印刷に比べ、繊細な色彩の表現では劣っていた。

ラベル印刷でCO2排出が半分に

 ところが、製版工程のデジタル化が進むにつれてフレキソ印刷の品質も向上。今ではグラビア印刷と遜色ない表現が可能になったといわれている。有機溶剤を使用する油性グラビア印刷と比べ、水性インクを使ったフレキソ印刷は環境や人体への影響が比較的少ない。さらに使用するインクも少量で済み、乾燥工程で必要となるエネルギーを抑えられる。

 このため、脱炭素に資する印刷方法として注目されているのだ。サントリー食品インターナショナルは緑茶「伊右衛門」(600ミリリットル)のペットボトルに2024年4月製造分から両面刷りの水性フレキソ印刷を導入した。油性グラビア印刷と比べてラベル印刷工程における二酸化炭素(CO2)排出量が半分以下になるという。

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